息子が自閉症だとわかった一歳代の頃に読んだのですが、読んでも息子の明るい将来を描くことができず、当時は気持ちが沈んでしまいました。
今お子さんが小さいのに診断されたばかりで激しく落ち込んでいる方には薦めませんが、ある程度障害の受容をされている方は心を打たれ、学ぶことの多い本です。
ここまで自閉症児の母親の心情を丁寧に描いて、長期間その変化を追いかけた本は他にはありません。
小児科医である松永先生が自閉症の勇太君とお母さんの立石美津子さんを取材し、勇太君が2歳から17歳(執筆当時)までの困難な出来事と、お母さんの葛藤と受容にいたるまでの心情が赤裸々に描かれています。
健常児を見て妬ましいと思う心は、憎たらしいと思う心までエスカレートした
息子には胎教も含めてあれほど英才教育を受けさせたのに自閉症になってしまった
普通に適当に育てられた子は健常児でちゃんと勉強している、なんて皮肉な運命なんだろう
障害を受容したつもりでも、ついなんでこんなこともできないのと怒りを爆発させられそうになる
でもIQ 37という数字を見て改めて息子に多くを要求してはいけないと思った
ああ、この失望・怒りと受容を繰り返す胸の内、経験がある…
それでも息子さんの成長と共にお母さんは障害を受容し、息子さんが17歳の現在は一緒にいられて本当に幸せ、もし自閉症が治る実があってもありのままの息子が好きだから食べさせない、とおっしゃってます。
私なら息子に即食べさせるわ
それでも立石さんのこの言葉は重く刺さりました
もし25年後に必ず墜落するとわかってる飛行機があるならば一緒に乗りたい
息子さんのこだわりは100%認めてあげて全て付き合ってあげてきた立石さん。
この考えは私とは100%違って相容れないです。
だって大変すぎる…公衆トイレの流水音が好きで型番による音の違いをコレクションするために休日は一日中トイレを回ったりとか…
某親の会の代表の方がおっしゃってるように、こだわりは意外と底が浅い。
こだわりが崩されて癇癪が起きるのであれば、適切に対応して癇癪自体を減らしていくようにしますね…
こだわりの行動ばかりしてたら他の事を学ぶ余地も少なくなるし、何よりも付き合わされる親が大変です。
でもそのこだわりや癇癪も含めて、息子の勇太君を丸ごと愛せる立石さんの器の大きさには敬服します。
すごい方です。
私にはそこまでの器はないからこそ、幼児である今の間に親も勿論子供も困らないように、着替え・トイレ等の生活スキルを教えたり、癇癪には徹底的に対応したり、こだわりを作らせないようにしています。
どちらが正しいかなんてないでしょうし、子供が大きくならないと自分の療育方針が子供にためになったのかなんて分からないですけどね。
療育や自閉症の子どもに対する対応方針は全く異なりますが、立石さんのお子さんに対する深い愛情と受容のマインドを自分に取り入れたいです。